約束の午前9時が過ぎた。陣痛開始から16時間。もう痛みも苦しみも限界だーーー!!午前9時20分。ようやく扉が開いた。当直医だけじゃない、女性のドクターと年配のドクターが一緒。まず、女性のドクターがやってきて名前を名乗り、内診を始めた。どうやら、これまでの当直医よりは先輩の様子。で、1時間前の当直医と同じことを言った。「んーー、鉗子分娩するにしても、もう少し頭が降りてこないと・・。」と。鉗子分娩っていうのは、器具を使って、胎児の頭を挟んで引っ張りだす分娩の仕方のこと。もう、絶望的な気持ちになった。1時間がんばっても何も変わっていないじゃないか。女性医師に向かって言った。「あの、さっきからずーーーっと、あとちょっとって言われてるんです。」と。女性医師は、「そうですよね。お気持ちすごくよくわかります。」と応え、年配のドクターの顏を見た。年配のドクターが前に出てきて、自分が産婦人科の責任者であることを告げて、改めて内診を実施。内診後、数秒考えた様子で、その後、こう言った。「正直、すごく判断が難しいところです。ホントにあと少しのところまで降りてきているのは確かです。でも、もう子宮口が全開してからのだいぶ時間が経っています。帝王切開にしましょう。」と。
ホッとした。やっと、やっと前進する。心配している母から、何度も何度も着信があったので、ここでようやく折り返した。
さんちゃん:「お母さん、あのね・・」
さんちゃん母:「どうした?生まれた??」
さんちゃん:「うんう、まだ生まれてないの。あのね、先生が、もう帝王切開にしましょうって。いいよね、帝王切開で。ここまで、頑張ったんだけどね。。」
さんちゃん母:「うんうん、よく頑張ったよ。いいよいいよ、帝王切開でいいんだよ。ここまでも頑張ったけど、ここから、もうあとひと頑張りだよ。頑張りなさい。」
母の声を聞いたら、不思議とホッとして、なんだか赦された気持ちになった。決して自然分娩に固執していたわけではなかったけど、どこかで「ここまで、こんなに頑張ったのに?」という納得のいかない気持ちと、自然に産めなかった自分を情けなく思う気持ちがあったんだと思う。それが母の言葉で、すーっと消えていった。
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