「あっ、血が付いてる。」、看護師さんにそう言われたのは、稽留流産の術後診察の日。診察の日の様子は前に書いたけど、この日は、子宮に残った血液をとってももらっていた。
診察が終わって、内診台を降りるその時。履いていたスカートの裾が、診察台の下に溜まっていた血液に触れてしまったみたい。「げっ、この後、仕事なのにどうしよう。」、黄色いスカートに、割と派手についた真っ赤な血。ユニクロに駆け込むことも覚悟したけど、看護師さんが親身になって、一緒に拭いてくれて、なんとか血の後は消えました。だけど、なんとなく、嫌な気持ちは心に残った。妊婦さんだらけの産院で、服まで汚してしまった自分が、ひどく惨めな存在に思えて。
スカートは翌日、クリーニングに出した。嫌な記憶を一刻も早く洗い流してしまいたかった。取りに行った時、無愛想なクリーニング屋のおばちゃんが、珍しく笑顔で声をかけてきた。「このスカート、ステキな色ね。これね、うちのお店で預かっている時も、すごく目立ってたわよ。」って。驚きながらもお礼を言ったら、おばちゃんの賞賛コメントはますます盛り上がった。「黄色のスカートは良く見るけど、こういう綺麗な色は初めて。でしょー、あなたもこの色が気に入ったんでしょ。わかるわー。」と。
たぶん、これから先、このスカートを見て思い出すのは、稽留流産のことじゃない。クリーニング屋のおばちゃんにめっちゃ褒められたこの夜のこと。
ありがとう、黄色いスカートを大きく振りながら、夜道を帰った。
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